【恐怖の昆虫実体験レポート(第2話)】
正体不明の蛾幼虫が無数・・・悪友の頭に!?
 ガキの頃・・・良く晴れた日曜日の事です。僕らは悪友の家の庭で「忍者ごっこ」
をして遊んでおりました。その庭は高さ1.5メートルほどあるブロック壁で囲まれ
ていたので僕は「壁歩きの術」だとか言ってそれに登り、真下にいる悪友を見下ろ
しました。すると、悪友はいきなり「気を付けろ、後ろの木には毛虫の巣があるぞ」
と叫びました。僕はその声を聞いて、ぞっとしました。「ふん!」勇気を振り絞って
おそるおそる後ろを向くと・・・そこには高さ3メートルくらいの幹の細い木があって、
僕のちょうど目の高さのところの枝に、なんと! 蜘蛛の巣状に糸を張った直径20
センチほどのヌメヌメした巣がへばりついていて、その中で1センチ程度の大きさ
の、細かい毛の生えた正体不明の白い蛾幼虫が無数にひしめき合い、うにょうにょ
と蠢いて(うごめいて)いました。『ううわぁ』僕は大きな声をあげ、そこから思
わず飛び降りました。と同時に『ぎゃっ』という悲鳴が聞こえました・・・・・・・・・・・。
 どうしたのかと思って悪友を見てみると・・・げええっ、例の巣が丸ごと彼の頭にか
ぶさり、その中で蠢いていた無数の蛾幼虫たちが、糸に垂れ下がりながら彼の首筋
を通り、着ていた赤黒横ストライプ模様のラガーシャツの襟元の隙間から服の中に
入り込んでいるではありませんか。ああ、しまった! 僕がいきおい良く飛び降り
た時に手が枝にぶつかり、そのはずみで巣が落ちたに違いありません。『うやあ、
うやあ』悪友は絶叫しながら気違いのように暴れまくり、泣きわめいていました。
僕はどうする事も出来なく、ただただ呆然とそれを眺めておろおろしていました。
まもなくして、奇妙な声を聞き付けた悪友の父親が玄関から出て来ました。そして、
いま悪友が置かれている状況をすぐさま察知すると、『のぼる(悪友の名・・・実名)、
落ち着くんだ』とか言って彼を押えつけ、ラガーシャツをすっぽと脱がすと、それ
でビシバシ息子の全身を思いっきりはたきました。その後、悪友は泣きながら父親
と一緒に家の中入ってしまったので、僕も家に帰りました。次の日、悪友は全身ボ
コボコ姿で学校に来ました。これは、オオケマイマイの時(1話参考)よりもさら
にひどい状態で、全身に赤い丘疹ができ、まるで、全身がジンマシンになった様で
した。先生や、同級生たちは『どうしたんだ、どうしたんだ』とこぞって悪友に聞
いていましたが、彼は何も答えず、ただニヤニヤしていただけでした。僕は悪友と
二人になった時に、昨日自分が仕出かした事について深く謝りましたが、彼はちっ
とも怒っていませんでした。それどころか、昨日の出来事を思い出すと可笑しくて
可笑しくて笑いが止まらないよ、などと豪快な事を言って高らかに笑い出す有り様
です。この時ばかりはこいつは大した奴だと思いました。しかし、それから何年か
経って悪友と横浜港へ釣りに出掛けた帰り道に、桜の下で落ちて死んでいる数十匹
のアメリカシロヒトリの幼虫に出食わしましたが、その時の彼の恐怖の表情を僕は
見逃しませんでした。                     (おしまい)

多分、不評! 恐怖の昆虫(節足動物)実体験レポート(最終話!)
【次回予告】これも恐怖! あの・・・タカサゴキララマダニが元・上司の胸の中へ!?
      これであなたは浅間山に行けなくなる・・・!?

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